大判例

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広島家庭裁判所尾道支部 事件番号不詳 判決

被告人 浅海ヤスコ

主文

被告人を懲役三月に処する。

但本裁判確定の日から五年間右刑の執行を猶予し右猶予期間中被告人を保護観察に付する。

訴訟費用は全部被告人の負担とする。

理由

(罪となるべき事実)

被告人は因島市土生町一、八一七番地の一において飲食店「たこ梅」を、同町同番地の三において旅館「紀乃国屋」を共に経営していたものであるが右営業中である昭和四二年八月五日○岡千○子(昭和二四年一二月六日生)が満一八年に満たない者であることを知りながら右飲食店「たこ梅」の店員として雇い入れ

第一、同女を同日および翌六日の二日間毎日午後一〇時から午後一二時頃までの間深夜業に使用し

第二、同女をして同月六日午前〇時過頃右旅館「紀乃国屋」において村井吉弘を相手として売淫させもつて満一八年に満たない児童に淫行させたものである。

(証拠の標目)(編省略)

弁護人は○岡千○子と村井吉弘との間に情交がなされたのは右両名の自由意思に基くものであつて被告人がこれを強制、勧誘もしくは示唆、慫慂したものではないので右点に関しては被告人は無罪であると主張するが児童福祉法第三四条第一項第六号の「児童に淫行をさせる行為とは必ずしも児童に対して積極的に淫行を勧めまたは強制したりする行為や或は淫行のための場所や設備を供与する行為等所謂作為的行為のみを指称するものではなく児童の使用者でこれを監護すべき地位にある者が利得の意思を以て児童が淫行することの情を知りながらあえてこれを阻止せず暗黙のうちに認容する態度を示す所謂不作為行為をも包含するものと解すべきところこれを本件について考えるに被告人は○岡千○子が満一八年に満たないものであることを知りながらこれを飲食店「たこ梅」のホステスとして雇用したが固定給は支給せず住込の食事附とし、その他は客のチップによるべきこととしたこと。村井吉弘から被告人に対して「女を世話してくれ」と頼まれたところ被告人は○岡は一ヵ月位前男と一緒に紀乃国屋に宿泊したこともあるので或は村井の相手になつてくれるかも知れないし、又相手になつてくれれば村井の旅館代がもうかると思つて、村井に対して「あの子(○岡の意)と直接話して見なさい」と答えたが村井が○岡に話しかけなかつたので被告人は○岡に対して「どうするのか返事をして上げえ」と返答を促したところ○岡が首を縦にふつて承知した結果前記村井と○岡との情交が行われたことおよびその際被告人は村井から旅館代(○岡、村井の二人分)として金一、五〇〇円を受取つて利得したこと等の事実が前記各証拠によつて認められる。被告人が○岡の売春の対価の一部を利得したか否かについては必ずしも明らかでないが前記各事実によれば被告人は児童である○岡の使用者として監督すべき地位にありながら村井の要求に応じ○岡に対して暗にその要求に応ずべき旨慫慂しその結果○岡をして村井を相手に情交を結ばせ且旅館代一、五〇〇円(その内の半分は請求すべき筋合ではない○岡の宿泊料である)を得たことは明らかであるから被告人が児童である○岡をして淫行させたものと認定すべきである。

よつて弁護人の主張は理由がない。

(法令の適用)

被告人の判示第一の所為は労働基準法第一一九条第一号、第六二条第一項に、判示第二の所為は児童福祉法第六〇条第一項第三四条第一項第六号に各該当するが何れも所定刑中懲役刑を選択し、以上は刑法第四五条前段の併合罪であるから同法四七条本文、第一〇条により重い判示第二の罪の刑に同法第四七条但書の制限内で法定の加重をなしその刑期範囲内で被告人を懲役三月に処するが被告人は本件を機として前記飲食店「たこ梅」および旅館「紀乃国屋」を廃業して夫と共に肩書住居に隠退して反省の日を送つており再犯の虞も殆んどないので同法第二五条第二項により本裁判確定の日から五年間右刑の執行を猶予することとし同法第二五条の二第一項後段を適用して右猶予期間中被告人を保護観察に付することとし、訴訟費用については刑事訴訟法第一八一条第一項本文により全部被告人に負担させることとし主文の通り判決する。

(裁判官 板坂彰)

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